「720の約数は全部で何個あるの?まさか全部書き出すわけにはいかないし……」
「約数の個数の公式で『指数に1を足して掛け算する』って習ったけど、なんで1を足すのか意味が分からない!」
「約数の総和(すべての和)の公式も、なんであんな複雑な掛け算の形になるのか納得がいかない……」
高校数学Aの「整数の性質(または場合の数の応用)」で必ず登場する「約数の個数と総和の求め方」は、定期テストや共通テストの頻出テーマです。丸暗記で乗り切ろうとすると、少し条件が変わっただけで手が止まってしまいますよね。
しかし、その背後にある「素因数分解」の意味と、樹形図・多項式展開の仕組みをしっかりと掴めば、どんな大きな整数が出ても瞬時に、そして確実に解けるようになります!
- 素因数分解の威力: なぜ約数を求めるときに素因数分解が最強の武器になるのか
- 約数の個数の公式: 指数に「+1」する理由と、樹形図を使った視覚的な理解
- 約数の総和の公式: 多項式の展開の仕組みを使った納得の公式の覚え方
- 実践問題の攻略: 「◯の倍数である約数の個数」や「約数の個数から元の整数を逆算する」応用パターン
この記事を読めば、「約数の個数や総和なんて怖くない!」と自信が持てるようになります。それでは、素因数分解の扉を開いていきましょう!
1. 約数の個数・総和を求めるには「素因数分解」が最強の武器になる理由
整数の問題で「約数」をあつかうとき、感覚や勘だけで立ち向かうのは非常に危険です。約数を効率よく、そして正確に探し出すための最初のステップが「素因数分解」です。
約数とは何か?素因数分解がすべての出発点
ある整数 \(N\) を割り切ることができる整数を、\(N\) の約数と呼びます。たとえば、「12の約数」といえば \(1, 2, 3, 4, 6, 12\) の6つです。
この「12」という数を素因数分解(素数だけの掛け算の形に分解)すると、次のようになります。
\(12 = 2^2 \times 3^1\)
実は、12の約数はすべて「\(2\) を何個使うか(0個〜2個)」「\(3\) を何個使うか(0個〜1個)」の組み合わせだけで作られているのです。
- \(2^0 \times 3^0 = 1 \times 1 = 1\)
- \(2^1 \times 3^0 = 2 \times 1 = 2\)
- \(2^2 \times 3^0 = 4 \times 1 = 4\)
- \(2^0 \times 3^1 = 1 \times 3 = 3\)
- \(2^1 \times 3^1 = 2 \times 3 = 6\)
- \(2^2 \times 3^1 = 4 \times 3 = 12\)
このように、素因数分解を行うことで、その数がどんな「素数のパーツ」から構成されているかが一目でわかるようになります。
すべて書き出す方法の限界と、数学的なアプローチの必要性
12くらいの小さな数であれば、頭の中で書き出して数え上げることもできます。しかし、「720の約数の個数と総和を求めよ」と言われたらどうでしょうか?
手作業で書き出していると、数えもれや重複(ダブり)が発生しやすく、計算ミスを連発してしまいます。また、テスト時間の多くを浪費することになります。
だからこそ、素因数分解を活用して「機械的・構造的に約数を処理する計算システム(公式)」を身につけることが重要なのです!
2. 【約数の個数】公式の意味と求め方の手順
素因数分解の準備ができたら、いよいよ「約数の個数」を求める公式を使っていきましょう。丸暗記ではなく「なぜその計算で求まるのか」の仕組みも合わせて理解することが重要です。
約数の個数を求める公式の正体(なぜ指数に「+1」するのか?)
ある正の整数 \(N\) が素因数分解されて \(N = p^a \times q^b \times r^c \cdots\) と表されるとき、約数の個数は次の公式で求まります。
正の整数 \(N = p^a \times q^b \times r^c \cdots\) の約数の個数は、
\((a + 1)(b + 1)(c + 1) \cdots\) 個
ここで誰もが抱く疑問が、「なぜそれぞれの指数(肩の数字)に 1 を足すのか?」という点です。
その理由は、「その素数を1個も使わない(0個使う=\(p^0 = 1\))という選択肢」が追加されるからです。
例えば \(p^a\) のパーツからは、素数 \(p\) を「0個、1個、2個、……、\(a\)個」使うという \((a + 1)\) 通りの選び方ができます。この「0個使う(使わない)」という選択肢が \(+1\) の正体です!
具体例で解説!「72」の約数は全部で何個ある?
実際に「72」という数を使って、公式をあてはめて解いてみましょう。
\(72 = 8 \times 9 = 2^3 \times 3^2\)
素数 \(2\) の指数は \(3\) なので、選び方は \(3 + 1 = 4\) 通り。
素数 \(3\) の指数は \(2\) なので、選び方は \(2 + 1 = 3\) 通り。
したがって、約数の個数は積の法則を用いて、
\((3 + 1) \times (2 + 1) = 4 \times 3 = 12\) 個 と求められます!
樹形図のイメージで理解する選び方の仕組み
この計算は、樹形図を描いてみるとより視覚的にスッキリ納得できます。
- \(2\) の選び方:\(2^0 (1)\), \(2^1 (2)\), \(2^2 (4)\), \(2^3 (8)\) の4枝
- \(3\) の選び方:そのそれぞれに対して \(3^0 (1)\), \(3^1 (3)\), \(3^2 (9)\) の3枝が枝分かれする
枝分かれの総数は \(4 \times 3 = 12\) となり、前章で学んだ「積の法則」そのものであることがよく分かりますね!
3. 【約数の総和】公式の仕組みと展開のテクニック
約数の個数が求められるようになったら、次は応用として登場する「約数の総和(すべての約数を足した合計)」の求め方に進みましょう。
公式だけをみると「なにこれ難しそう……」と感じてしまいますが、実は中学校で習う「式の展開(因数分解の逆)」の仕組みを知れば、一気に納得できて簡単に覚えられるようになります。
約数の総和を求める公式の考え方(多項式の展開)
正の整数 \(N\) が \(N = p^a \times q^b\) と素因数分解されるとき、すべての約数の総和は次の公式で求められます。
正の整数 \(N = p^a \times q^b\) の約数の総和は、
\((1 + p + p^2 + \cdots + p^a)(1 + q + q^2 + \cdots + q^b)\)
「なぜ、このようなカッコの掛け算の形になるのでしょうか?」
これは、先ほどの樹形図の組み合わせを文字式の展開(分配法則)に見立てたものです。たとえば、\(12 = 2^2 \times 3^1\) の約数の総和を考えたいとき、次の式を展開することを想像してみてください。
\((1 + 2 + 2^2)(1 + 3)\)
この式を展開すると、前のカッコから1つ、後ろのカッコから1つずつ項を選んで掛け合わせたすべての組み合わせ(つまり、12のすべての約数)がもれなく現れます!
具体例で計算!「72」の約数の総和をスピーディーに求めるコツ
先ほども登場した「\(72 = 2^3 \times 3^2\)」を使って、実際に約数の総和を計算してみましょう。
- 素数 \(2\) のパーツの和を作る:
\(1 + 2^1 + 2^2 + 2^3 = 1 + 2 + 4 + 8 = 15\) - 素数 \(3\) のパーツの和を作る:
\(1 + 3^1 + 3^2 = 1 + 3 + 9 = 13\) - 最後に掛け合わせる:
\(15 \times 13 = 195\)
したがって、72のすべての約数を足し合わせた総和は195となります。このように、それぞれの素因数ごとに「\(0\) 乗から最大指数まで足したカッコ」を作り、それらを掛け合わせるだけでどんな大きな数でも簡単に計算できます!
個数の公式と総和の公式の混同を防ぐ見分け方
テスト中によくあるミスが、「個数の公式(\(a+1\) の形)」と「総和の公式(\(1+p+\dots+p^a\) の形)」をごちゃ混ぜにしてしまうことです。
迷ったときは次のように思い出すと安心です。
- 個数: 「いくつあるか」なので、単純にそれぞれの素因数の個数に 1 を足して掛ける。
- 総和: 「足し算の合計」なので、それぞれの素因数の“べき乗(累乗)の和”を作ってから掛ける。
4. 【実践例題】定期テスト・共通テストの頻出パターンを攻略
基礎的な公式の使い方が分かったところで、ここからは定期テストや共通テストで差がつく応用パターンを3つに絞って攻略していきましょう。実際の入試では、少しだけ条件が加えられた問題が出題されます。
パターン①:「◯の倍数である約数」の個数と総和を求める
72の約数のうち、偶数(2の倍数)であるものの個数と総和をそれぞれ求めよ。
「2の倍数」である約数ということは、素因数分解したときに素数 \(2\) を少なくとも1個は含んでいるものを数えればよいということになります。
- 72の素因数分解: \(72 = 2^3 \times 3^2\)
- 個数の求め方:
\(2\) の選び方は \(2^1, 2^2, 2^3\) の 3通り(\(2^0\) を除外する)。
\(3\) の選び方は \(3^0, 3^1, 3^2\) の 3通り。
したがって、個数は \(3 \times 3 = 9\) 個。 - 総和の求め方:
\(2\) のパーツの和は \(2^1 + 2^2 + 2^3 = 2 + 4 + 8 = 14\)(\(1\) を除外する)。
\(3\) のパーツの和は \(1 + 3 + 9 = 13)。
したがって、総和は \(14 \times 13 = 182\)。
【答え】 個数:9個、総和:182
パターン②:「約数の個数が◯個である整数」を逆算する問題
\(2^a \times 3^2\) の約数の個数が12個であるとき、自然数 \(a\) の値を求めよ。
約数の個数の公式を逆向きに使う典型的な問題です。
- 素因数 \(2\) の指数は \(a\) なので、選び方の数は \((a + 1)\) 通り。
- 素因数 \(3\) の指数は \(2\) なので、選び方の数は \((2 + 1) = 3\) 通り。
- 全体の約数の個数は、これらを掛け合わせたものなので、
\((a + 1) \times 3 = 12\) という方程式が成り立ちます。
これを解くと、\(\lvert a + 1 = 4 \rvert\) となり、\(a = 3\) が求まります。
パターン③:最大公約数・最小公倍数と約数の関係
共通テストなどでは、2つの整数 \(A, B\) の最大公約数(GCD)や最小公倍数(LCM)が与えられ、「共通の約数」や「どちらか一方の約数」の個数を問う問題が出題されます。
基本方針は変わりません。まずは与えられた数をしっかりと素因数分解し、共通する素因数や全体の構成をパーツごとに分解して考えることで、複雑な問題もシンプルに解きほぐすことができます。
5. まとめ:素因数分解をマスターして約数の問題を瞬時に解こう!
ここまで、高校数学A「整数の性質(場合の数の応用)」で避けて通れない「約数の個数と総和の求め方」について、基本から実践的な応用パターンまで詳しく見てきました。
最後に、今回学んだ重要ポイントをもう一度おさらいしておきましょう。
- すべての出発点は「素因数分解」: 大きな数に出会ったら、まずは素数だけの掛け算の形に直す!
- 約数の個数の公式: 各素因数の指数にそれぞれ \(1\) を足して掛け合わせる(「使わない(0個)」の選択肢が \(+1\) の正体)。
- 約数の総和の公式: 各素因数の \(0\) 乗から最大指数までを足したカッコを作り、それらをすべて掛け合わせる(多項式の展開の仕組み)。
- 「〇の倍数」などの応用: 条件に合う素因数のパーツだけをあらかじめ除外・固定してから計算する
約数の個数や総和の公式は、丸暗記しようとするとすぐに忘れてしまいますが、「なぜその形になるのか(樹形図や式の展開)」という背景を一度理解してしまえば、テスト本番で忘れることのない強力な武器になります。
この単元をマスターすれば、整数の性質に関する問題で確実に周りに差をつけることができます。次は、さらにステップアップして「最大公約数・最小公倍数の活用やユークリッドの互除法」の世界へ進んでいきましょう!
📖 次のステップへ進む

コメント