ICT教育の7つのメリットとデメリット~授業導入における注意

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ラッシーくん

ICT教育を導入するメリットとデメリットは何でしょうか??
導入における問題点や解決策も教えて下さい。

本記事の内容
  • 授業におけるICTの活用状況
  • ICT教育の7つのメリット
  • ICT教育の7つのデメリット・注意点
  • ICTの活用でつまづく3つの要因と解決策

本記事では、15年以上の教育現場での指導と実際にICTを学校に導入した経験から上記の内容を解説していきます。

ICTのメリットやデメリットなどを理解し、ICT教育を適切に導入したい教職員や学校関係者の方におすすめです。

授業全体のコツはこちら

目次

授業におけるICTの活用状況

現在、学校教育においてはICT(情報通信技術)が広く導入されています。

特に、コンピューターやインターネットを活用した教育方法や学習ツールが多数存在しており、多くの学校がそれらを採用している状況です。

具体的には、授業中にプレゼンテーションソフトを使った教材の提示や、オンライン教材の活用、学習管理システムを用いた成績管理や課題提出などが一般的です。また、オンライン授業や遠隔授業など、ICTを活用した遠隔学習も近年急速に増加しています。

ただし、すべての学校や地域でICTが十分に導入されているわけではなく、導入状況にはまだばらつきがあるというのが現状といえるでしょう。

ICT教育の7つのメリット

ICT教育を導入するメリットは以下の7つになります。

ICT教育の7つのメリット
  • いつでもどこでも指導ができる
  • 生徒・保護者とのコミュニケーションがとりやすくなる
  • 教職員の業務効率化
  • ペーパーレス化
  • AIによる分析指導が可能
  • 視覚指導の優位性
  • 反復指導の優位性

いつでもどこでも指導ができる

ICT教育のメリットの1つ目は「いつでもどこでも指導ができる」という点です。

2020年「COVID-19」によって、在宅を余儀をなくされた時期がありましたが、このときにICT教育が進んでいた学校とそうではなかった学校とでは初期対応にかなりの違いがあったように感じています。

例えば、全生徒に既にタブレットPCを導入していた学校はオンラインでの在宅指導に即座に対応できましたが、逆にこれまでICT教育に取り組まなかった学校は分散登校でなかなか授業進度が進まなかったり、急なオンライン授業に対応しなければならなかったりと学校ごとの対応が顕著に出た期間だったのではないでしょうか。

このように、ICT教育には「オンラインでも(離れていても)指導ができる」という側面があります。

例え生徒が離れた場所にいても、「課題や動画配信」「ビデオ会議などでの授業」「データでの資料共有」といったことができることはかなりのメリットといえるでしょう。

生徒・保護者とのコミュニケーションがとりやすくなる

ICT教育のメリットの2つ目は「生徒・保護者とのコミュニケーションがとりやすくなる」という点です。

例えば、私自身がこれまで学校に提案させていただいたICTツールの導入例のひとつに「Microsoft Teams」がありますが、これを活用することで「教員と生徒」もしくは「教員と保護者」とのチーム(グループ)を作ることができます。

同一のチーム内では、例えば、以下のような対応が可能です。

Teamsを活用した生徒・保護者とのコミュニケーション例

  • 資料共有
  • 緊急時の連絡
  • オンライン授業
  • オンライン面談
  • 各種アンケート

以下、具体的な活用例となりますが、このようなツールを利用することで生徒・保護者とのコミュニケーションはいつでもどこでもとれることは、重要なメリットといえるでしょう。

資料共有

「資料共有」に関しては各種プリントをデータ化することで即座に生徒・保護者に配布することができます。

生徒への「授業プリント」「各種課題」などはもちろん、保護者へは「お知らせプリント」なども共有可能です。

特に、「保護者へのお知らせプリント」に関しては生徒にプリント(紙)を渡しても保護者に渡し忘れることがあったり、どのお知らせをどのタイミングで配布したかも煩雑になりがちですよね。

したがって、Teamsを利用したデータでの資料共有はかなり有用です。

緊急時の連絡

「緊急時の連絡」もTeamsで行うことが可能です。

緊急連絡用のソフトを導入している学校も中にはあるかもしれませんが、利便性や多数のアプリケーションを入れることで管理が複雑になることも考慮すると、Teamsで統一して緊急連絡も行うことを本サイトではおすすめしています。

オンライン授業

1つ目のメリットでも紹介した「オンラインでの指導」に関してはTeamsのビデオ会議で可能になります。

Teamsでのビデオ会議であれば、画面共有やコメント共有なども簡単にできますのでPowerPointなどでのスライド授業も可能です。場合によっては、カメラを直接黒板に向ければ、板書での指導も可能ですし、録画機能もついています。

オンライン面談

「オンライン授業」と似たような利用方法にはなりますが、ビデオ会議を活用すれば今までやってきた面談などもオンラインで行うことが可能です。

各種アンケート

「各種アンケート」なども「Microsoft Forms」を活用すれば簡単に作成できます。

集計に関しても、即座にできるため、活用しやすいツールといえるでしょう。

教職員の業務効率化

ICT教育の3つ目のメリットは主に「教職員の業務効率化」になります。

例えば、上記でも紹介した資料がデータでも共有することができるという点は「印刷する手間がなくなる」という点において教職員にとってもメリットがあります。

オンラインで面談や会議ができるようになることも日程調整の手間を考えると業務削減になるといえるでしょう。

ペーパーレス化

ICT教育の4つ目のメリットは「ペーパーレス化」になります。

こちらも上記で紹介した通り、授業時のプリントなどはICTを授業導入している学校であればデータ化できますので印刷量は少なくなります。教科書においても現在は様々なデジタル教科書が販売されていますので、このようなツールを活用することで生徒にとっても重い教科書を持たず、いつでもどこでも学習できる環境を構築することができます。

また、「指導要録」「出席簿」「必携簿」「調査書」といったことも校務システムの種類によっては、簡単にデータ化することが可能です。

「出席簿」などは特に、まだ冊子でとっている学校もあるかもしれませんが、紙を使った作業は出欠間違いの原因にもなるため、徐々にデータ化することをおすすめしています。

AIによる分析指導が可能

ICT教育の5つ目のメリットは「AIによる分析指導が可能」である点です。

2023年現在「Chat GPT」などのAIが話題を呼んでいますが、これからはこのようなAIを利用した分析指導が求められる時代だと感じています。

具体的には、「AIを用いた個別の学習カリキュラムの確立(学習方法のプランニング)」「AIを用いた進路先の選定」などに関してはこれまでの模試や成績の膨大なデータからAIに任せる仕組みづくりを構築することで我々教員以上の学習指導や進路指導が実現すると考えます。

したがって、このようなAIの分析指導を行う上でもICT教育を推進していくことはメリットとなるでしょう。

一方でこのようなAIを教育へ導入することへの危険性が問題視されています。人が考えたような文章を即座に作れたり、質問すれば精度の高い回答が返ってくることから、子どもの「考える力」を損なう恐れがあるということは私自身も

視覚指導の優位性

ICT教育の6つ目のメリットは「視覚指導の優位性」です。

これらは現在ICTを授業で導入している多くの学校で活用されている点になりますが、ICTは「映像」「アニメーション」といった視覚での指導をするのに適しています。

私の場合は数学の教員ですので、例えば、微分係数と接線の傾きを関連付けるために実際に図を動かしながら理解させるなどでICTを授業で活用しています。

人は口頭だけで説明されるよりも、図や表を使って視覚にうったえた方が確実に理解しやすいという性質がありますので、このような視覚指導での優位性はICT教育は非常に優れているといえます。

反復指導の優位性

ICT教育の7つ目のメリットは「反復指導の優位性」です。

例えば、数学の授業において、

1.演習プリントを5分で解き
2.自分で解答(間違い)を見直す時間を2分とり、
3.ICTを用いたスライドで要点のみ解説を聞き、
4.もう一度類題を解く

というICTフル活用の高密度反復演習型の作業を繰り返し取り入れることは一つの実践例として有用だと感じています。

ここで、重要なのは「2. 自分で解答(間違い)を見直す時間を2分とる」「4.もう一度類題を解く」です。

「教えられた」ことから学ぶのではなく「自分で間違いに気づいたという経験」から知識を得て、「類題でできるようになった経験」から技能がついたことを実感することが重要だと捉えています。

また、教師側の指導としては「すべてを教えない」すなわち、「ヒントや考え方を言い続ける」ことが現時点でも最適解の一つになり得ると考えます。

このような高密度反復演習型の作業に関しては、従来の板書ではできないことになりますので、反復指導を取り入れたい場合にはICTを使うメリットになり得るでしょう。

また、教員だけではなく、生徒個人の家庭学習としてもICTを利用することで以前よりも反復学習は確実にしやすくなります。

学校と連携したシステムであれば「Classi」、通信教育などは「進研ゼミ」「Z会」「スタディサプリ」などは本サイトでもおすすめしています。

ICT教育の7つのデメリット・注意点

続いて、ICT教育を導入した場合はメリットだけではなく、デメリットも存在します。以下の7つに関しては経験上デメリットになり得ますので注意が必要です。

ICT教育の7つのデメリット・注意点
  • 考える力を損なう危険性がある
  • Wi-Fi接続に関するトラブル
  • 予算が思った以上にかかる
  • ICTを授業で使う頻度に差異が出る
  • 情報リテラシーに関して徹底する必要がある
  • ICTがパフォーマンスになりがち
  • ICT支援員の設置は必須

考える力を損なう危険性がある

1つ目のデメリットは「生徒の考える力を損なう危険性がある」点には十分注意しなければなりません。

ICT教育によって、知りたいことがいつでもすぐにわかるようにはなりましたが、逆にいうと、自分で考える前にAIなどのツールに頼ってしまう可能性に関しては常に危惧しなければなりません。

したがって、ICT教育を授業にて導入する際には、「考えさせる内容」と「ICTなどですぐに調べさせる内容」を事前に吟味する必要があります。

Wi-Fi接続に関するトラブル

2つ目のデメリットは「Wi-Fi接続に関するトラブル」に関しては常に対策しておく必要がある点です。

基本的には、学校のアクセスポイントの整備に関しては1クラスあたりの人数に対して余裕をもった設定にはしますが、それでも全生徒が一斉にネット回線を利用した場合には繋がらない生徒が出る可能性があります。

私自身はある学校に対して「スタディサプリ」の導入をした経験がありますが、学校の環境整備の関係からガイダンスの時点でログインできない生徒も多く出てしまったことがあります。

また、動画などに関してもスムーズに流れないこともありますので、授業においてもそれを前提に事前準備を進めた方がよいでしょう。

予算が思った以上にかかる

3つ目のデメリットは「予算が思った以上にかかる場合がある」点です。

ICTを学校側で全面的に導入する場合に、かかる費用は例えば以下のようなものがあります。

ICTの導入でかかる費用の例

  • Wi-Fi環境整備
  • 液晶モニター、プロジェクター、電子黒板などの映写設備
  • 生徒用タブレット
  • 教職員用タブレット
  • 各種ソフトウェア
  • 業者提携費用
  • 各種保守費用

上記のように、初期費用に関しては多岐に渡ってかかります。

導入タイミングによっては、補助金で準備することも可能ですので、学校全体で導入する際は必ず確認しましょう。

また、クラウドサービスを利用することで、初期費用をかなり抑えることができますし、リサイクルショップや中古市場などで機器を調達することもできましたのでこの方法もおすすめです。

上記の中では、特に注意が必要なのは「生徒用タブレット」を生徒負担(生徒購入)にするか学校負担(学校購入で貸し出し)にするかになります。

本サイトでは授業毎にタブレット配布する負担がなく、管理に関しても生徒個人に任せられる「生徒負担(生徒購入)」を学校への導入としてはおすすめしていますが、「生徒負担(生徒購入)」の場合は学校全体でICT教育を活用していくという強い方向性が必要です。

「タブレットを生徒負担(生徒購入)してもらったが、使う場面が限られている」

ということになると生徒・保護者からのクレームにもなりかねませんので、「生徒負担(生徒購入)」の場合は学校全体でICTをどのように活用するかしっかり仕組み作りを立てておきましょう。

また、授業担当の先生としても、このような学校の状況を鑑み、積極的に授業で活用していくことを忘れないようにすることが大切です。

ICTを授業で使う頻度に差異が出る

4つ目のデメリットは「ICTを授業で使う頻度に差異が出る」という課題は必ず起こります。

例えば、「数学のA先生の授業ではICTを使うけれど、国語のB先生の授業ではまったく使っていない」という事態です。

このように授業で使う授業と使わない授業が出てしまうと、生徒・保護者からの信頼を損なう危険性があります。

したがって、学校の方向性としては個々の教員にICT活用を任せるのではなく、ICTをどのような場面で、どのように活用するかについても仕組み作りをしておく必要があります。

例えば、

「授業をするときは必ず液晶モニターやプロジェクターを使ったスライド授業に原則統一し、生徒タブレットではスライドの内容を常に手元でみれるように画面共有する」
「紙のノートを使うのは全授業廃止し、タブレットに書き込ませる形式に統一する」

このように、特定の先生頼みにならないような利用方法を学校全体で設定するとよいでしょう。

また、各教科担当の先生も各学校のICT環境をふまえた上で授業準備に積極的にICTを利用することが大切です。

シンスケ

実際、授業準備自体も教授資料やデジタル教科書を使えば、かなり効率よく行うことができますのでICTを自身の授業に取り入れるのは大変おすすめです。

情報リテラシーに関して徹底する必要がある

5つ目のデメリットは「情報リテラシーに関しては徹底する必要がある」という点です。

生徒にICTタブレットを利用させる場合は、便利である反面、

「ネットの情報を著作権無視で引用をしてしまう」
「危険なサイトにアクセスしてしまう」
「授業中にタブレットで別のことをする」

といったことも起こり得ます。

情報リテラシーやモラルに関しては主としては「情報」の授業での指導となりますが、各授業担当の先生方もこのような点に関しては注意しながら授業を進める必要があることは認識しておきましょう。

ICTがパフォーマンスになりがち

6つ目のデメリットは「ICTがパフォーマンスになりがち」という点です。

学校のICT環境が整っており、授業でICTを導入していても活用していること自体に教員が満足し、実際の生徒の学力が伸びていない場合は多々あります。

本サイトでは教えることの本質は「上手く説明できたかではなく、生徒が成長したかどうか」という点が重要だと考えております。

したがって、「ICTを使って○○をさせた」という観点ではなく、あくまでもその結果として生徒が何ができるようになったかという事を念頭におくことを重視して、ICTを使った授業案を計画するようにしましょう。

ICT支援員の設置が必須

7つ目のデメリットは「ICT支援員の設置が必須」となる点です。

授業においてもログインできないなどの不具合が起こる場合はもちろんありますが、授業以外においても端末の故障や不具合があった場合は対応をする必要があります。

したがって、特にタブレットを生徒購入にしている場合には、情報科の教員のみではなく、ICT支援員による業者サポートは必須と考えておいた方が良いでしょう。

したがって、予算に関していえば、この分も考慮しなければなりません。

また、軽度の不具合であれば、すぐに対応できるだけのICT知識は全教員に必要になってきます。

ICTの活用でつまずく3つの要因

教員のスキルや知識の問題

ICTを有効に活用するには、教員が適切なスキルや知識を持っていることが必要です。

しかし、多くの教員がICTに関する知識や技術に不慣れであったり、それに対する抵抗感を持っている場合があります。

現在スキルがあまりない方は今からでも、身に付けられるスキルはたくさんありますので是非修得しましょう。

教育プログラム変更の問題

ICTを導入するためには、従来の教育プログラムを見直し、ICTを有効に活用する新しいプログラムを開発する必要があります。

特に、近年では新学習指導要領が導入されたことに伴い、学習の方向性が一新されました。

これらを考慮するとプロセスは時間と労力を要するため、学校にとって負担となる場合があります。

セキュリティの問題

ICTを活用するには、個人情報や機密情報の管理が必要です。

しかし、導入するICTによっては、情報漏洩や不正アクセスのリスクがあることもあります。

生徒が不適切なコンテンツに接触する可能性に関してはしっかりとした対策を行い、セキュリティ対策をきちんと行う必要があります。

ICT教育の課題に対する3つの解決策

教員のスキルや知識の問題に対する解決策

教員のスキルや知識不足を解決するためには、ICTリテラシー向上に向けた研修や教育プログラムを実施し、ICTを有効活用できる教員環境を整備する必要があります。

夏期休暇期間などで職員研修期間を設けたり、通常の職員会議の時間で研修を行う時間をとってもよいでしょう。

また、他校のICT活用状況などをみたり、情報を共有することも大切です。

私が提案させていただいた例としては、他校と合同での授業見学会を実施したこともあります。

教育プログラム変更の問題に対する解決策

教育プログラム変更の問題に対処するためには、まずは新学習指導要領や世の中のニーズが何かを理解することが大切です。

新学習指導要領の変更点だけでなく、出口となる大学受験の変更点に関しては抑えておき、教育プログラムを見直しましょう。

これらを基にしたICTの活用案を学校全体でシステム化する必要があります。

セキュリティの問題に対する解決策

情報漏洩や不正アクセスなどのリスクに対処するためには、情報管理の体制を整備することが必要です。

例えば、パスワードの強化や、データバックアップの定期的な実施、セキュリティソフトの導入などが挙げられます。

また、教育現場においては、生徒たちに適切なネットワークマナーを教育することも重要です。

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